ピエール・モレは、フランス・ブルゴーニュ地方コート・ド・ボーヌ地区、ムルソー村を拠点とする生産者です。シャルドネによる白ワインと、ピノ・ノワールによる赤ワインの双方を手がけ、ムルソーの伝統と現代的な畑仕事を結びつけてきた存在として知られています。
ピエール・モレは、ドメーヌ・ルフレーヴで長年にわたり栽培責任者を務めた人物です。アンヌ・クロード・ルフレーヴの時代において、畑管理の中核を担い、ビオディナミ農法の導入と定着に深く関与しました。その経験を背景に、1980年代後半から自身のドメーヌを本格的に展開し、畑仕事を最優先とする姿勢を明確にしていきます。
所有畑はムルソー村を中心に、ピュリニー・モンラッシェ、モンテリー、ヴォルネイなどコート・ド・ボーヌ各地に広がっています。村名クラスからプルミエ・クリュを主軸とした構成で、いずれも小区画ながら立地条件に恵まれた畑が選ばれています。ムルソーでは複数の区画を手がけ、村の多様な表情を丁寧に描き分けています。
栽培では早い段階からビオディナミ農法を採用し、化学肥料や除草剤に依存しない管理が徹底されています。土壌の状態、ブドウ樹の反応、年ごとの気候条件を細かく観察しながら、収量を抑え、成熟度を重視した収穫が行われています。畑ごとの差異は均質化されるものではなく、そのままワインに反映されるべきものとして扱われています。
醸造においては、人的介入を抑えた穏やかな手法が取られています。白ワインでは果実の輪郭と酸のバランスを軸に、樽の影響を前面に出さない構成が志向されています。新樽の使用は控えめで、樽香よりも質感と構造を支える役割に留められています。赤ワインについても過度な抽出は避けられ、ピノ・ノワール本来の繊細さと畑由来の要素が重視されています。
スタイルとしては、即時的な華やかさや分かりやすさよりも、透明感、緊張感、そして時間の経過による変化を前提としたものです。若い段階では引き締まった印象を持つことが多く、熟成を経ることで次第に奥行きと複雑さが現れていきます。
総じて、ピエール・モレは、ムルソーという村の伝統を深く理解したうえで、畑仕事の精度と一貫性によってワインの質を積み重ねてきた生産者です。ルフレーヴで培われた思想を個人のドメーヌに落とし込み、コート・ド・ボーヌのテロワールを静かに、しかし明確に表現し続けています。