ドメーヌ・コシュ・デュリは、フランス・ブルゴーニュ地方コート・ド・ボーヌ地区、ムルソー村に本拠を置く生産者です。シャルドネによる白ワインを中心に、ムルソーのみならずブルゴーニュ全体を象徴する存在として、長年にわたり特別な位置づけを保っています。
ドメーヌの歴史は1920年代に始まりますが、現在の評価の基盤を築いたのは、20世紀後半にドメーヌを率いたジャン=フランソワ・コシュです。彼は父の代から受け継いだ畑と醸造の方向性をさらに突き詰め、畑・収穫・醸造のすべてにおいて妥協のない姿勢を貫きました。現在は息子のラファエル・コシュが運営に加わり、家族経営の体制のもとでドメーヌが継続されています。
所有畑はムルソー村を中心に、オー・ペリエール、ペリエール、ジュヌヴリエールといったプルミエ・クリュを含みます。加えて、村名ムルソーの複数区画、さらにコルトン・シャルルマーニュといった特級畑も手がけています。いずれの畑も規模は大きくありませんが、樹齢の高いブドウ樹が多く、畑ごとの個性が極めて明確です。
栽培では極めて低い収量が徹底されています。畑仕事は細部まで管理され、収穫量を抑えることで果実の凝縮度を高める方針が一貫しています。特定の農法を思想的に強調することはありませんが、実際の作業は非常に厳格で、ブドウ樹の状態を最優先とした判断が積み重ねられています。
醸造においては、ドメーヌ・コシュ・デュリを特徴づける要素として、澱との接触時間の長さと還元的な環境管理が挙げられます。発酵・熟成を通じてワインは引き締まった状態を保ち、樽の使用はあくまで構造を支えるためのものとされています。新樽比率は抑えられており、樽香が前面に出ることは意図されていません。
スタイルとしては、果実味や華やかさよりも、密度、緊張感、持続性が前面に出ます。若い段階では非常に硬質で閉じた印象を持つことが多く、時間をかけて空気と熟成に触れることで、層の厚い味わいが徐々に現れていきます。即時的な分かりやすさとは距離を置き、長期熟成を前提とした設計です。
赤ワインについても同様に、抽出を抑えつつ、果実と構造の均衡を重視した造りが行われています。量は少ないものの、白と同様に畑と年の違いを明確に反映したスタイルです。
総じて、ドメーヌ・コシュ・デュリは、ムルソーという村の可能性を、極限まで研ぎ澄ました形で表現してきた生産者です。流行や外部評価を意識した造りとは一線を画し、畑・収量・醸造の積み重ねによってのみ成立するワインを一貫して生み出し続けています。その姿勢こそが、長年にわたり特別視され続けてきた理由といえます。