ドメーヌ・ジョセフ・ロティは、ブルゴーニュ地方コート・ド・ニュイ地区、ジュヴレ・シャンベルタンを本拠とする家族経営の生産者です。ロティ家のワイン造りの歴史は1710年頃まで遡るとされ、地域でも古い系譜を持つ家系のひとつに数えられます。世代を重ねる中で畑と向き合い続けてきた時間の蓄積が、現在のスタイルの基盤となっています。
ドメーヌとしての形が整ったのは19世紀初頭とされ、その後も家族による継承が続いてきました。現在は11代目にあたるピエール・ジャン・ロティが当主を務めています。兄フィリップ・ロティが長年にわたり評価を高めてきましたが、2015年に急逝。その後は家族とともに運営を継続し、伝統を軸としながらも穏やかな調整を重ねる体制へと移行しています。
所有畑はジュヴレ・シャンベルタンを中心に、マルサネにも広がります。ジュヴレでは村名およびプルミエ・クリュ区画を持ち、古樹の比率が高いことが特徴です。深く根を張る古木の果実は、年ごとの条件を過度に整えることなく、土地の質感を反映する要素として重視されています。マルサネでは鉄分を含む石灰質土壌が、果実味に引き締まった骨格を与えます。
主軸はピノ・ノワールによる赤ワインですが、シャルドネ、ピノ・ブラン、アリゴテも栽培し、地域の多様な表情に対応しています。収穫は手摘みで行われ、化学的介入を抑えつつ、成熟度と酸の均衡を見極めた判断がなされます。
醸造では、穏やかな抽出と全房比率の調整が行われ、伝統的なブルゴーニュの手法が基盤です。樽熟成はキュヴェとヴィンテージに応じて設定され、清澄や濾過は最小限に留められます。果皮や果汁に由来する要素を過度に削らず、テロワールの輪郭を保つことが重視されています。
ワインの表現は即時的な華やかさを前面に出すものではありません。ジュヴレでは赤系・黒系果実が層を成し、酸とタンニンが時間とともに整っていきます。マルサネでは鉄分由来のニュアンスが骨格を支え、熟成により土壌の印象が静かに立ち上がります。古木由来の密度と長年の蓄積がもたらす均衡が、ゆるやかに開いていく構成です。
ドメーヌ・ジョセフ・ロティのワインは、派手さよりも持続力と奥行きを重視する存在です。時間の経過とともに層がほどけ、土地と家族の歴史が静かに感じ取れるスタイルといえます。